階段は人が移動するためのエリアのため、照明を計画する上でも移動のしやすさが大切です。では、階段で効果的な照明とはどのようなものでしょうか。本記事では、階段照明のポイントについて詳しく見ていきます。
階段の照明を選ぶときの4つのポイント
①安全性を重視する
階段の照明において、まず重要なことは安全な階段を昇り降りすることができるような灯り作りです。
厚生労働省の人口動態調査(※)では、高齢者の「転倒・転落・墜落」による死亡者数が「交通事故」の約4倍多いということが示されています。階段は、高齢者より若い世代でも転倒や転落の事故につながる場所です。
※厚生労働省「人口動態調査」(平成 26 年~令和2年)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_055/assets/consumer_safety_cms205_211005_02.pdf
飲食店やホテルのほか一般住宅でも、階段の転倒や転落を防止するために、階段につける照明は安全に配慮することが重要。安全に配慮した階段の照明計画として、具体的には、足元がしっかりと照明で灯りに照らされていることや、上の階と下の階の両方から見て照明がまぶしく感じないことなどがあります。
②まぶしさに気をつける
階段の照明としてウォールライト(ブラケットライト)を用いる場合の注意点はまぶしさに注意が必要です。
照明がまぶしく周りがよく見えなくなった状態やまぶしさによる不快な状態を「グレア」と呼びます。特に階段上から見た時にグレアが生じる状態は、安全に階段を下りられなくなる危険性があります。グレアにならないための照明の配置や種類の選択が大切です。
③メンテナンスのしやすさを考慮する
階段の照明では、メンテナンスのしやすさも重要です。
階段があるエリアの天井は、照明の電球交換が難しい場所の一つです。手が届く場所に照明の器具を配置する工夫として、たとえば、階段の手すりの壁上部分に照明を埋め込んで天井に光を反射させ、階段全体の照明とする方法などもあります。
また、照明のメンテナンスとしては、電球の交換だけでなく清掃も含まれます。照明設計時に用いられる保守率は、1~2年に1回程度の清掃を前提とされていますので、階段の照明は、清掃のしやすさにも配慮したいところです。階段の段板は幅も狭く、高い場所での清掃は危険が伴います。階段エリアの天井に照明を配置する場合、階段の段差途中とならず水平になった場所で清掃できるように配置を工夫すると、安全に清掃が可能です。
④深夜帯に使うことを考えた照明計画
階段の照明計画として、深夜の時間帯も想定しておく必要があります。
深夜、窓の外からの光がなくなるだけでなく、他のエリアの照明もついていない中で階段を昇降する場合、安全面から考えると、階段エリアの照明で灯りを確保することが大切です。
一方で、夜中に起きてトイレに行く際、もし階段を使うという動線の場合、階段の照明が明るかったとしたらどうでしょうか。トイレから戻ったらまたすぐに寝たいのに、階段の照明で目が覚めてしまう可能性もあります。
階段でよく使用される照明は?
階段でよく使用される照明は、ウォールライト(ブラケットライト)です。
ウォールライト(ブラケットライト)は、壁に取り付ける照明です。
一般的に、補助として使用する照明で明るさがやや控えめではありますが、間接的にライトが照らされ、壁や柱を使った雰囲気のある空間を作り出すことができます。
ウォールライトは、天吊りの照明に比べると比較的低い位置につけることが可能ですので、メンテナンスしやすく、階段の照明に適しています。階段の照明としてウォールライト(ブラケットライト)を用いる場合、グレアが生じないように、照明の上下にルーバーまたはカバーが適切に設置されているかどうかという点がポイントとなります。
階段照明の基本はウォールライト(ブラケットライト)ですが、それと別にフットライトなどをつけると効果的です。フットライトは足元を照らす照明ですが、特にトイレの動線の途中に階段がある場合には、フットライトを併設することで足元が安全になります。
また、フットライトを等間隔に設置する場合、低めの位置でメンテナンスを行うことができて便利です。フットライトはオシャレな演出効果も高い照明です。
まとめ
階段の照明のポイントは、移動するエリアという点から、まず安全であることです。
そして、そのためには、まぶしさに気をつけた配置や照明の種類、メンテナンスのしやすさ、深夜帯の昇降に備えた設計などがあります。
こうしたポイントをもとに、安全でオシャレな階段の照明空間を作っていただけたらと思います。
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